1. はじめに:なぜ今「サーキュラーエコノミー」が重要なのか?
2023年の世界全体のCO2排出量は約365億トンに達し、そのうち約30%は製造業を含む産業セクターから排出されています。これまでのリニア経済モデルは「資源採取→製造→消費→廃棄」という一方向の流れでしたが、このままでは地球の資源枯渇と環境破壊が加速します。そこで注目されているのが、資源を循環させ廃棄物を極力減らす「サーキュラーエコノミー」です。IEA(国際エネルギー機関)は、サーキュラーエコノミーの導入で2050年までに世界で年間最大95億トンのCO2削減が可能と試算しています。
2. サーキュラーエコノミーの定義とそのCO2削減効果
サーキュラーエコノミーとは、製品や素材をできる限り長く使い続け、再利用・再製造・リサイクルを促進する経済モデルです。欧州委員会の報告書によると、EU内で2020年から2030年の間にサーキュラー戦略を本格実施すれば、最大7億トンのCO2を削減できるとしています。
具体的には以下の4R戦略が重要です。
- リデュース(削減):原材料の使用量やエネルギー消費を減らす。
例:P&Gの「再利用可能詰め替えボトル」で年間数千万リットルのプラスチック削減を実現。 - リユース(再使用):製品や部品を繰り返し使用。
例:アウトドアブランド「パタゴニア」は、中古衣料の回収・販売プログラムで年間約10万着を循環。 - リサイクル(再資源化):廃棄物から原材料を回収し再利用。
例:ユニクロは2019年から衣料回収プログラムを開始し、年間2万トンの繊維を再資源化。 - リメイク(再製造):故障品や中古品を修理・改良して再販売。
例:シスコシステムズは、企業向けネットワーク機器を再整備して約30%コストダウンで提供。
3. 業界別に見るサーキュラーエコノミーの具体事例
製造業:日立製作所の高リサイクル率工場
日立製作所は、国内主要工場で使用済み製品の分解と素材分別を徹底。2022年度の工場内リサイクル率は98.6%に達し、廃棄物を大幅に削減しています。さらに、製造工程での廃棄物も見直し、省資源設計により年間約1万トンのCO2排出削減に貢献しています。
建設業:竹中工務店の循環型建設副産物管理
竹中工務店は建設現場から発生する廃材を現場内で分別し、再資源化率を従来の約60%から80%に引き上げました。これにより、年間で約2万トンのCO2排出抑制効果を達成しています。
アパレル業:H&Mの衣料回収とリサイクル技術
H&Mは世界中の店舗で古着回収を実施。回収された衣料はリサイクル繊維に加工され、約20%が新製品に活用されています。2023年には再生ポリエステル使用率を全体の60%に引き上げ、CO2排出量を2019年比で30%削減しました。
IT・通信業:NTTの機器再製造とリース事業
NTTは通信機器の使用済み部品を再整備し、中小企業向けにリース提供。これにより新規製造品の需要を抑え、年間約3,000トンのCO2削減を実現しています。
4. 政策動向:日本と海外の取り組み
日本
- 資源循環促進法(2022年施行)
製造段階での製品分解設計や再利用義務を強化し、2025年までにプラスチック再利用率30%達成を目指す。 - グリーン購入法改正
循環型製品の調達比率向上を義務化。 - 地方自治体の補助金
東京都の「循環型ビジネス支援補助金」では、資源循環ビジネスの立ち上げに最大300万円の助成。
欧州
- EUサーキュラーエコノミーアクションプラン
2020年から施行。建築資材の再利用率を2030年までに70%に引き上げ、企業には製品の修理・再利用義務を課す。 - Green Deal
脱炭素と資源循環を両立し、2050年までにカーボンニュートラルを目指す。
5. デジタル技術の活用
- ブロックチェーン
Plastic Bankが展開する海洋プラスチック回収のトレーサビリティ管理により、不正なリサイクル偽装を防止。 - AIによる廃棄物選別
米AMP Robotics社のAI搭載ロボットが廃棄物からリサイクル可能な素材を自動選別し、分別効率を30%向上。 - IoTセンサー
製品の使用状況や劣化をリアルタイムに監視し、最適なタイミングでメンテナンスや再利用へ誘導。
6. 数字で見るサーキュラーエコノミーの効果
- 欧州委員会の調査では、2030年までにEU内で7億トンのCO2削減が見込まれる(日本の年間排出量の約1.5倍に相当)。
- 日本の環境省は2025年までに資源循環率を25%向上させる目標を掲げている。
- 企業の導入事例では、リサイクル材料利用で製造コストが10~20%削減、製品寿命延長による顧客満足度が平均15%向上。
7. 今後の課題と展望
- 消費者の行動変容
リユースやリサイクル製品の選択肢拡大が必要。教育・啓発活動も不可欠。 - サプライチェーン全体の連携
部品設計から廃棄回収まで一貫した循環設計が求められる。 - 新たなビジネス機会の創出
素材開発、再製造サービス、物流最適化、循環マーケットの活性化など。


