2024年4月、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)が大幅に改正され、すべての事業者にとってエネルギー管理への対応が不可避となりました。今後の法令順守はもちろん、脱炭素社会への貢献や企業価値向上にもつながる本改正の内容を、最新動向や具体的な企業事例、数値データを交えて詳しく解説します。
1. 省エネ法とは?
省エネ法(正式名称:エネルギーの使用の合理化等に関する法律)は、1979年の石油危機を契機に制定された法律で、企業や家庭におけるエネルギー使用の効率化を目的としています。経済産業省資源エネルギー庁が管轄しており、これまで何度かの改正を経て、特に製造業や物流業などエネルギー多消費事業者に対して厳格な報告義務と管理体制の構築を求めてきました。
法の適用範囲は年々拡大され、今では製造業・建設業・卸売業・運輸業・宿泊業など、あらゆる業種に及んでいます。加えて、国際的な脱炭素潮流に合わせて、温室効果ガスの削減指標も組み込まれるようになってきました。
2. 2024年改正の背景と目的
今回の改正は、以下の3点を背景に行われました。
- カーボンニュートラルへの対応(2050年目標):菅義偉前首相が掲げた「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」目標に基づき、制度的強化が求められていました。
- 国際的なESG投資拡大への対応:2023年の時点で、世界のESG投資残高は約40兆ドルに達しており、日本企業にもサステナビリティ情報の開示が強く求められています。
- 再エネ比率向上と電力需給調整の必要性:特に電力需要が逼迫する夏季・冬季のピーク対応や、再エネ電源の不安定さへの対策が求められています。
3. 改正の主なポイント
(1) エネルギー管理の対象拡大
これまで「原油換算で年間1500kl以上使用する事業者」が対象でしたが、今回の改正により、原油換算で年間50kl以上、もしくは電力使用量で300万kWh以上の事業者も報告義務対象となりました。
経産省の推計によれば、これにより新たに約18万事業所が追加対象となります。
(2) エネルギー使用実績のデジタル報告の義務化
特定事業者に対しては、電子データ(XML形式)による年次報告が義務付けられ、2025年度より全企業がe-reportingシステムを通じて提出する必要があります。これに伴い、紙での提出は廃止され、デジタル対応が遅れる企業には厳しい状況が予想されます。
(3) 供給サイドも対象に(ESCO事業者、エネルギー供給業者)
エネルギーの「供給者責任」が強調され、電力会社やガス会社、地域エネルギー供給事業者などにも、省エネ支援義務やエネルギー効率改善への貢献が求められます。これにより、サービス提供だけでなく、利用者の省エネ支援活動への関与が期待されています。
(4) 物流業者への省エネ指針の強化
トラック輸送や倉庫業務を行う企業には、1トン・キロメートルあたりのCO2排出量をKPIとして設定し、3年間の改善目標を提出する義務が追加されました。これにより、グリーン物流の推進が制度面でも明確に義務化されました。
4. 対象企業と新たな義務
2024年の改正により、全国で約20万社が新たに省エネ報告義務の対象となると試算されています。特に、建設業・食品製造業・宿泊業など、これまで対象外だった中小規模業種の企業も多く含まれています。
【新たな義務の具体例】
- 年間エネルギー使用量の実績報告(電力、ガス、燃料別)
- CO2排出量の算出と報告(GHGプロトコル準拠)
- 自社内での省エネ方針策定と実施状況の年次報告
改善活動のKPI設定(例えば「2025年までにエネルギー原単位5%削減」など)


