地球温暖化対策として注目を集めている「SBT(Science Based Targets)」は、パリ協定の1.5℃目標に整合した温室効果ガス(GHG)削減目標の国際的な枠組みです。単なる目標ではなく、科学的根拠に基づいた数値設定により、企業の信頼性向上・ESG投資獲得・国際競争力強化を実現できます。本記事では、SBTの概要、認定取得のメリット、設定方法、国内外企業の事例(富士通、資生堂、アップル等)、最新動向を踏まえた戦略的意義をSEO観点から詳細に解説します。
1. SBTとは何か?
SBT(Science Based Targets)とは、科学的根拠に基づき、企業が温室効果ガスの削減目標を設定するための国際的枠組みです。パリ協定で定められた「産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑える」目標に整合する削減目標を企業が掲げることで、サステナビリティの信頼性を担保します。
SBTイニシアティブ(SBTi)は、CDP、UNGC、WRI、WWFの4団体によって運営され、2024年時点で世界で5,000社以上が認定済み、日本企業も700社超が参画しています。
2. なぜ今、GHG削減目標の科学的整合性が求められるのか?
- 気候リスクの顕在化:2023年の世界の平均気温は産業革命前と比べて+1.48℃に達し、1.5℃目標達成の猶予はほぼ残されていません(WMO報告)。
- 投資家の透明性要求:ブラックロックなどのグローバル投資家は、TCFDやSBTの対応を投資判断の基準としています。
- 規制強化の潮流:EUではCSRD(企業持続可能性報告指令)が施行され、企業に気候関連情報の開示が義務化されました。
このような背景から、曖昧な目標ではなく、科学的整合性のある目標設定が企業の信頼性を高める鍵となっています。
3. SBT認定の基準とプロセス
基準
- 1.5℃整合(Scope1+2):必須要件
- Scope3(サプライチェーン排出):企業全体の排出の67%以上を占める場合は目標設定が必須
- 目標期間:5~15年以内に達成可能な短中期目標
認定プロセス(約6~9か月)
- コミットメントレター提出
- 排出量のベースライン計測(GHGプロトコル準拠)
- 削減目標の設計
- SBTiへの提出・審査(有償)
- 認定・公表
4. SBTによる企業価値向上のメカニズム
- ESG評価の向上:MSCI・FTSE4Good等のESGインデックスにてプラス評価。
- 顧客との信頼構築:サプライチェーン全体での脱炭素が購買選定基準となる(例:自動車産業、アパレル業界)。
- ブランドイメージ向上:消費者の環境配慮意識の高まりに対応。
- 資金調達の有利化:グリーンローンやサステナブルボンドへの申請が容易に。
5. 日本企業の事例:富士通、資生堂、味の素
富士通株式会社
- 2023年にSBTiより1.5℃整合目標の認定取得。
- 2030年までにScope1+2の温室効果ガスを71.4%削減(2013年比)、Scope3も30%以上削減予定。
株式会社資生堂
- 2030年までにGHG排出量を42%削減(2019年比)、全製品パッケージをリサイクル可能素材に。
- SBT認定と併せて、CDP Aリスト企業にも選定。
味の素株式会社
- Scope1+2:50%削減(2018年比)、Scope3も20%削減目標を設定。
- グリーン電力100%活用へ移行中。
6. グローバル企業の動向:アップル、マイクロソフト、ネスレ
Apple Inc.
- 2030年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラル実現予定。
- 95%の主要サプライヤーに再エネ導入を要求。
- Scope3対策に年間1億ドルの「カーボンソリューションファンド」を創設。
Microsoft
- 2030年までにカーボンネガティブを宣言。
- 過去の排出量まで回収する「カーボンリムーバル」技術に10億ドル投資。
Nestlé
- 2030年までに50%削減、2050年にネットゼロ実現を目標。
- 主要ブランドの脱炭素スコア公開、農業支援への資金投入。
7. SBT取得のための具体的ステップ
- GHG排出量の算定:Scope1〜3のデータ収集と可視化(例:環境省算定ツール使用)
- 削減目標設計:SBTiの技術基準に基づいた削減率を検討
- 社内体制の整備:経営陣のコミットメントと横断組織の設置
- 外部支援の活用:コンサル会社(例:三菱UFJリサーチ&コンサルティング、PwC Japan)との連携
- SBTi申請とPR:認定後は広報戦略として活用
8. 支援制度と国の補助金情報
- 環境省:脱炭素先行地域支援補助金:最大2/3補助、上限5億円(再エネ、省エネ投資)
- 経産省:GX促進支援事業:脱炭素設備導入費用の補助(中小企業向け)
- J-クレジット制度との連携:排出量削減分をクレジット化し収益化可能
9. SBTとTCFD・CDP・RE100との連携
- TCFD:気候関連財務情報の開示。SBTの設定根拠として整合。
- CDP:環境情報開示プラットフォーム。SBT認定企業は高スコアを得やすい。
- RE100:再エネ100%目標。SBTと同時取得で企業の環境姿勢を包括的に表明。
これらの国際基準との相乗効果が、企業の国際的評価や事業展開に寄与します。
10. まとめと今後の展望
SBTに基づくGHG削減目標は、企業の「環境対応力」と「経営の透明性」を裏付ける極めて重要な要素です。ESG投資の拡大、サプライチェーン全体への要求、法制度の進化により、企業は科学的整合性を持つ目標設定を避けては通れません。
今後はSBTだけでなく、気候影響リスクの財務的開示、Scope3対策の深化、バリューチェーン全体での協働が求められます。 持続可能性と競争力を両立させる鍵は、「信頼される目標設定」にあります。SBT取得はその第一歩であり、将来にわたる企業価値を支える強力な基盤となるのです。


